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YAMAHA T-5 チューナ 修理作業メモ (2020年4月20日 記)
(2023年6月2日 回路図解析 追記)
いつも聞いているオーディオ装置 アンプ YAMAHA A-6 と チューナ YAMAHA T-5は
購入から40年経過していて、あちらこちら不具合が生じています。
最近は、FM受信感度が低下して気になっていました。
丁度2020年国内の緊急事態宣言が発令、この時間を活用して修理してみました。
部品取りなどの為に以前に購入したジャンク品と比較して、互いに良い所取りをして、
いわゆる 「にこいち」による修理です。(二個いち)
以下はその作業記録です。
YAMAHA T-5 外観
★ 1979年発売の製品 FM/AMチューナ YAHAHA T−5
MEMO
1. 最近気になっていた不具合点
・FMの感度が悪い。
- 数年前にFMフロントエンド、中間周波回路を最良の状態に調整したが、いま一つ感度が良くない状況であった。
- FM受信周波数のドリフトがある。
、 - 糸掛けダイヤル機構で、バリコンに取り付けてあるプーリ付きの減速ギヤのシャフトが緩む。
周波数ダイヤルを左右にフルスイングすると軸が外れることがある。一度軸が外れてしまうと
分解してギヤを組み立て直す困難な作業が必要になり、ダイヤルをあまりうごかせない。
2. 内部構造
<内部全体 上部>
・シンプルなレイアウト。FM MPXとAM主回路以外はディスクリート回路。
高解像度写真こちら
<糸かけダイヤル機構>
・回転感触を良くするため ダイヤルの後ろにフライホイルがある。
デジタルチューナにはない心地よい感触で気に入っている。
<エアバリコンと糸かけプーリ>
・バリコン軸とプーリ軸の間にはバックラッシュ防止機構付きの減速ギヤがある
<エアバリコンの軸ギヤとストッパー>
・脱落したバックラッシュ防止機構付きの減速ギヤとストッパ
<スイッチ部分>
・スイッチ部分と、照明用ムギ球への給電線(AC電圧供給)
接続して使用しているアンプA-6と同じ形状の照明だがアンプはDC定電流駆動で給電方式が異なる。
3. これまでの修理暦と現状の不具合内容
このチューナは以下のように、満身創痍の状態です。
(修理暦)
・FM/AMシグナル強度を示すLED列の一部が点灯しない。
- LEDを再ハンダして解決した。(2003年12月メモ)
・同軸アンテナ入力に絶縁トランスを追加。
- シャーシーとアンテナの外被線間で電位差があるためRCAプラグ交換時感電気味になる。
ANT入力に高周波メガネトランスを追加しDC的に切り離した。
→ オーディオセットはPCにも接続されているので感電の原因はオーデイオ接続しているPCからの回り込みかもしれない。
・FM/AM切り換えスイッチの故障
- このSWは押し込んだ状態でAM状態になるが、押し込みラッチが壊れて押し込まれた状態にラッチせずAMが聞けない状態だった。
部品は3連SWで特殊品。オークションで壊れた同型機(ジャンク)を購入し部品を外し交換した。
・FM フロントエンドの周波数飛び改善
- 温度が変化すると、フロントエンド局発トリマの接続不良(さび)で受信周波数は少しだけピョンと飛んでいた。
トリマーを数回回転させ再調整すると解消した。おそらくトリマの接触不良だろう。
- 同時に感度不足を感じて中間周波トランスを調整した。
・FM ステレオMPX回路の異常で、左右分離が不安定。
- YAMAHA特製のLSIが使用されでいる。オークションでLSIを捜し交換した。(LSIカタログPDFは下記にあります)
・電源スイッツの照明用電球(ムギ球)切れ。
- メインアンプ YAMAHA A-6と同じムギ球(スタンレー 12V 70mA)を使用している。
A-6の予備部品を使用し交換した。(A-6修理メモ参照)。
(現状/最近の不具合)
・FMの感度低下
- 3エレメントのFMアンテナをスカイツリーに向けているが、他機と比較してFM感度が不足気味。
時々サービスエリア外の局も聞きたいがきれいに聞こえない。
・バリコンのプーリ軸が外れる障害
- ダイヤルを左右にフルに移動することを繰り返すと、やがてプーリ軸が外れるようになった。
バックラッシュ防止ギヤがついているので、復帰の組み立て作業は非常にたいへん。
そのため、ダイヤルは全振幅の半分程度にとどめて使用するようにしていた。(満足に使えていなかった)
4. メンテナンスの方針
・二個いち
- 数年前にスイッチ部品取り用に買った同型ジャンク(SWは不良品に買えてある)を引っ張りだして試用してみた。
パネルにある大きな傷や、電源スイッチ、ダイヤルの照明が点灯せずそのままでは使えそうそうにない物で内部も汚い。
だがナント、現状機より感度が良く安定度も悪くないことがわかった。
- そこで、FM感度向上のためフロントエンド部分だけを交換することも考えたが、
フロントエンドに続く後段とのマッチングの調整がたいへんそうなのでプリント基板と筐体を丸ごと交換することにした。
- 以前に交換したスイッチ類を現状機の基板から外し、ジャンク基板に再度移植した。(下記写真)
- 糸かけダイヤル機構も含め、内部筐体と背面板はジャンク機の物をそのまま使用した。
- ジャンク機の電源照明用ムギ球と、ダイヤル照明用のムギ球(右 1個)は不点灯であったので交換した。
今回もアンプA-6の予備部品を使用した。(A-6修理メモ参照)。
これにより、製造番号はジャンク品の番号になった。(ジャンク品 SN = 209458。. 従来機 SN = 244515)
<二個いち作戦0>
・左:現状機、右:ジャンク品
<元の基板に戻したスイッチ>
<SWを外した基板>
・基板のスイッチ搭載部分。(SWを外したところ)
完成・復活です。
<スムーズに機能するようになりました>
下段: PreMain Amp.A-6、中段: Tuner T-5、上段: Cassete TC-K55
5. T-5の主要回路を基板から読みとって解析してみました 2023/6/2追記
1)次の情報はWEB公開資料にありましたが、他の詳細回路図はなかなか見つからないので
機能切替えスイッチの接続部分を除いた主要な回路ブロックのみを調べてみました。
@フロントエンドユニット(バリコン部分)
AMPX復調用LSI_LA3380
BAM受信LSI_LA1240
2)回路ブロック
取扱説明書 page-13に書かれているブロックダイアグラムを参照しました。
各ブロックの回路図を読み取り、書き出しました。
T-5 ブロックダイアグラム(取説 13ページ)
T-5 回路図-1: 電源部、シグナルメーター部、スケルチノイズフィルタとそのAGC部、ステレオ分離回路部
T-5 回路図-2: FM中間周波回路(IF)部、チューニング表示LED部
T-5 FMフロントエンド部(T-5D サービスマニュアル回路図)
(説明)
@電源部
・トランス受電方式で一時側は常時接続。電源スイッチは二次側にある。
・直流電源電圧は単波整流回路で作られ、+14V,-18Vの二つ。
+側からは、+11Vの安定化電圧源と2系統のLEDドライブ用定電流電源が作られる。
+11Vは、常時供給の+Bと FM,AM機能で切り変える FB,AB の2系統に分かれる。
AFMのIF部回路、検波(復調)信号の活用回路
・IFフィルタは3個のIF(セラミックフィルタ)、信号増幅は2段シリーズの差動BIPアンプuPC577 2個で構成。
1段目のCの後のVRは、PCBの版(LOT)によって異なる(PCBの版は微妙に異なるものが少なくても4種ある)。
(例)IF同調コイルがあるものとVRだけの物、AF出力のパイロット信号フィルタ回路の違い、AM/FM切り替えSWの配線 等。
・検波(復調)回路はレシオ検波。
検波後はAF出力端子直前までDC直結の構成であり、基準側はNVccと記載されてLA3380の基準電圧(15-pin 4.04V)に接続されている。
・検波信号のパイロット信号(19kHz)は Trバッファを経てから、また主信号はそのままLA3380内のアンプPに入る。
検波主信号は、ディスクリート回路でLSIの内部PLL(76KkHz)で発生した38kHzパルスでサンプリングされてR/Lに分離される。
DC結合のRとLの平均電圧:TM(理論的には同調時にNVccと同じになる)が、同調表示LEDの制御に使われている。
・SQ信号(シグナル品質信号)の生成の為、検波信号はフィルタでパイロット信号をカットしてからスケルチ回路(雑音増幅)に入る。
SQ信号はホワイトノイズの表が逆のDC信号である。(ノイズ小→SQ信号大:Hレベル)
受信放送電波信号振幅はIF部で一定振幅まで増幅されリミットされているので信号が強いとS/Nが向上する。
すなわち S:強 → N:少を意味する。
スケルチ回路で増幅されたノイズ信号をDC化しているのは、Tr-3のB-E間接合ダイオードである。
Tr-3のコレクタには、接続されたキャパシタにピーク(マイナスのピーク)電圧がサンプリングされその電圧が保持される。
ノイズがある時はTr-3のVcは0.5V以下になりノイズが減少するとノイズ振幅に依存しながら3.5Vまで上昇する。
スケルチ回路の出力信号電圧はTr-4のEF(エミッタフォロワ)を介し0V(放送無)〜0.29V(フルスケールで同調)の範囲の直流電圧として出力される。
・一方、マルチパスによる妨害波は「ノイズ」成分として検波されるため、マルチパスの(変調波のdV/dtの)影響に合わせてSQ信号電圧が低下する。
・定電流で駆動されている6個のLEDは、Tr-11〜Tr16がSQ信号の逆信号により順にONすることで消灯される。SQ=0Vの時:全LED消灯。
なお、最下位のLEDの消灯(Tr-16がON)すると、Tr-9がOffになりそのVcが0Vから11V(FB電圧)に変化しこれがMUTE信号として使用されている。
BチューニングLED
・TM信号は検波電圧のDC成分の振れ幅が拡大された信号で、定電流駆動されて点灯しているたLEDをTM信号がTr-17,18(PNP)がONしてLEDを消灯させていく方式になっています。
ここで面白いのは、Tr-22の定電流駆動とベースの分割抵抗の効果によって、LEDの中点(両Trのエミッタ)は一定の電圧になることです。
この電圧がNVccと一致していると同調位置で両LEDが点灯するので好ましいのですが、計測では(4.04-3.66=)0.38Vだけ低かったため、
わずかにセンター表示がずれることになっていました。→ 無視できる程度の誤差です。
3)調整
IFリミッタがかからない程度のRF信号を入力した状態にして、IC202の入力端子をオシロでモニタしながら
@表示スケールに合わせて局発を、さらにRF入力回路のトレースを調整した。
さらに、
ANVcc-TM間にアナログテスタを入れ、差電圧がゼロになるようT102を少し回して調整した。
→ この調整で、SQメータの最大点に対して、同調LEDやSTEREO-LEDの表示のずれがなくなりすっきりした。
・SQメータの0信号点とフルスケールを2つの専用VRで合わせても良い。
note)この0信号点調整は、MUTE信号が効き始めるレベルを調整する物です。
4)感想
昔の機器のせいか、いろいろアナログ回路の工夫がされていて回路動作の理解が難しいことがあったが
楽しいリバースエンジニアリング作業でした。
6、YAMAHA T−5 仕様概要 (カタログ値)
(正価 32,000円, 1981年当時)
6. YAMAHA T-5 関連資料
取扱い説明書 (PDF)
(参考)
使用されているLSIについて参考になる製品カタログ → (搭載品とは別部品かもしれない)
FM Stereo MPX SANYO LA3380 (PDF)
AMチューナー SANYO LA1240 (PDF)
◆ オーディオ機器 ◆ 2020/4/20 現在
・ オーディオアンプ
YAMAHA A-6 (1979年) (正価 \66,500)
出力 : 100W + 100W
・ カセットテープデッキ
SONY TC-K55 (1979年) (正価 \59,800)
・ CDプレーヤ
SONY CDP-M59 (1989年) (正価 \24,800)