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 HAM用の屋上アンテナを回転させるローテータ(エモテータMFG Ltd. 105TS)の動きが悪いので
 分解メンテナンスをしました。

 1993年5月に屋上(屋根上)に設置したHAM用のアンテナを回転させるローテータは、21年間 一度も
 分解メンテナンスをしていません。
 2〜3年前から、気温が下がる冬季に回転せず 暖かい春〜秋にだけ回るという状況が起きていましたが
 ついに 今月(2014年6月)になって 片方向(左回転)しか回転しなくなりました。
 電気的調査の結果、モーターには異常がなかったので 分解を試みました。
 以下はその作業記録メモです。

    



MEMO Note: 写真は拡大できます。
1) 分解 
  写真1a   屋根から下ろした
エモテーター105TS。
20年以上 屋根上の
タワーに上がって
いました。
 
  写真1b   鉄製のネジにさびが
ありますが まだ
使えそうです。
 
写真2 モーターケースの端子盤を
外します。
配線の色を記録して
端子盤の裏の配線を
外します。
1 赤、 2 緑、 3 黒
4 青、 5 黄、 6 白

端子盤は外さなくても
ベアリングははずれますが
外した方がはるかに
作業性が良いです。
写真3 モーターケースの下方から
ベアリングを止めている
4本のネジを外しリングと
ギヤケースを外し
本体を開きます。
少しグリースが残って
いました。

ベアリングボールを
なくさないように。
(個数):
ギヤ側(上側) 49個
リンク側(下側) 47個
でした。
写真4a モーターケース側様子。

写真4b モーターケース側様子。
上方より見る。
写真4c モーターケース側様子。
側面より見る。

下方のベアリング受けの
グリースは 固化していた。

写真の都合で 端子盤は
付いている状態になって
いる。
写真5 モーターケース内に
駆動ギヤアセンブリーが
入っている。
取り出して 裏面(下側)から
みた様子。
鉄板の上にモーター、
コンデンサ、
ポテンシオメーター(VR)等
が見える

写真は クリーニングした
後の写真です。
写真6 モーター、コンデンサ、
マイクロスイッチ アセ
ンブリーを 配線を付けた
まま外します。

(クリーニング後の写真)
写真7 ポテンシオメーター(VR)
アセンブリを外します。

(クリーニング後の写真)
写真8a モーター関連と
VR関連を外した
駆動ギヤ アセンブリー。

減速ギヤは2軸で
5段カスケード。
一番歯が大きいギヤが
ギヤケースと噛み合い
ます。
写真8b 駆動ギヤ アセンブリーを
横から見る。
左端は 回転ストッパー用
ノブ。

写真8c 駆動ギヤ アセンブリー。

右端は 回転ストッパー用
ノブ。
ノブもグリースで固まって
動きにくい。
写真8d 駆動ギヤ アセンブリー。

手前のギヤ(1番ギヤ)が
モーターのピニオンギヤに
つながる。
下部のこの1番ギヤに
解けたグリースが
流れ込む。

固化したグリースで
軸受けが固まり 非常に
固い。(指では回らない)

2) クリーニング
写真9a 固化したグリースを
デグリーサーで吹き除き、
灯油で洗い、もう一度
デグリーサーで
クリーニングしました。

3番キヤを指で押すと
ギヤ全体が回転するほど
軽くなりました。
写真9b ストッパーノブ側。

ノブも軽く動くように
なりました。
写真10 ベアリングボール、
ネギも 同様に
クリーニング。

モーター軸受けは
クリーニング禁止です。
ミシン油を一滴つけ
ました。

内蔵部品 一覧写真です。

右の2本は ネジ回し。
部品ではありません。
写真11 ケース、リングも
クリーニング。

マストホルダーは
そのままです。
写真12 モーターは
ピニオンギヤだけ
クリーニング。

回転する円盤は
ブレーキディスク。
通電すると 回転子が
前に突き出て 摩擦が
なくなる構造。
写真13 モーターも分解。(不要)
ステータは 教科書通りの
磁気回路です。

一角に温度センサー。
ローターは直径に比べて
長い構造です。
軸受けにコイルバネが
あり 停止時はローターを
押しブレーキディスクが
摩擦板とこすれて
ブレーキになる仕組み。
通電時はローターが
磁気で引かれてギヤを
突き出す。

3) 組み立て
写真14 駆動部を組み立てる-(1)

モーターのギアの
かみ合わせの深さは
適度に調整。

写真15 駆動部を組み立てる-(2)

コンデンサー(6.8uF)を
支えるラグ板、
マイクロスイッチ、
ポテンシオメータ(VR)を
取り付ける。
写真16 ポテンシオメーターは
仮止めとする。

手で回転してVRを調整
できるように ギヤは
結合しないでおく。
写真17 ギヤ全体を組み立て
通電しギヤが軽やかに
回転することを確認。
電流を測定してみたら
100V 26mA AC であった。

その後、グリースアップ。
各ギヤの軸受けには少々
スプレー式のリチューム
グリースを吹きつけ、
ギヤの歯には
竹串で丁寧にウレア
グリースを塗る。
時々回転させ均一に
塗る。
写真18 VR位置合せ作業-(1)

VRの抵抗値を計りながら
結合ギヤを指でまわし
VRを中点にあわせる。
VRは 600オームなので
片側300オームとする。
10オーム位の誤差はOK。
その状態でギヤを
結合する。

このVRはストッパーが無く
回し過ぎると中央端子が
オープンになる構造。
そのときは戻せば良い。
写真19 VR位置合せ作業-(2)

方角を正しく表示させる
ため ストッパーノブと
ギヤケースの位置を
合わせが極めて重要。

ギヤケースの内側にある
ノブ押し突起を
ストッパーノブの180度
反対の位置に合せること。

モーターなどを組み立てた
ギヤアッセンブリをモータ
ケースにネジ止め後、
上下逆さまにして
この方向関係を保つ。
写真20 VR位置合せ作業-(3)

ノブ押し突起は表側にも
鋳込んだ "マーク"がある。
写真21 ギヤケースの
内側ギヤ部分と。
ベアリング部に
ウレアグりースを塗り
埋め込む感じで
ボールを並べる。

グりースの粘着力で
ボールは落ちないです。
さらにボールの上に
グリースをたっぷり
塗りました。
写真22 リングも同様に
グリースを塗ります。

ボールの上にも
グリースをたっぷり。
写真23 配線を外に出しながら
モーターケースにギヤ
アセンブリーを納め
3本のネジでとめる。
その後、上下逆さまに
したモーターケースを
ギヤケースの中央に置く。

このとき
a)ギヤケース突起と
b)ギヤアッセンブリー
  のノブ
の位置は ほぼ正確に
180度反対方向に置く
ことが重要。

写真24 モーターケースとギヤ
ケースの位置関係を保ち
上下を反転します。
そしてモーターケースを
リングの中央に置く。
リングを持ち上げるように
して位置を合わせ、
4本のネジで固定する。
接続端子も取りつける。
マストクランプの位置を
マストの直径を考慮して
決め 4本のネジで固定し
組み立て完了。

最後にモーターケースに
銀色の塗料を吹きつけた。

4) 取り付け作業で大問題
メンテナンスが完了したので、早速屋根上のタワーに取り付けを開始しました。。。
ところが。。

誤って エモテーターを屋根から地上に落下させてしまいました。
コンクリートの地表にぶつかり破損しました。被害は
 1) アルミのケースの変形と ヒビ割れ、
 2) 内部のギヤアセンブリ鉄板基板のめくれ、
 3) モータのステータ止めネジ変形 (もちろん回転しない)
 4) ポテンシオメーターの伝達ギヤ歯の欠損

ケースは 部品として販売されていますが とても高価です。
メーカーに聞くと
ギヤケース:9千円、モーターケース:8千円、リング:3千円だそうです。(2014.7.2現在)

数日後 気を取り直して修理してみることにしました。
・モーター
 ステーターを固定する曲がった4本のネジを丁寧に修復し軸受けを丁寧に合わせ
 正常回転を回復させた。鉄製のモーター支持金具の曲がりはラジオペンチで修正した。
・ギヤアセンブリの基板(約2mm厚の軟鋼板)
 基板は衝突時のモーターの重みでめくれ上がってしまいでこぼこ。 
 幸い減速ギヤ軸は曲がっていなかった。
 ギヤアセンブリを分解し平らな鉄板を取り出して 要所を大型万力でプレスして平らにした。
・ポテンシオメータのギヤ
 一部2〜3個の歯がつぶれていて修復不能。
 幸い通常回転範囲ではこの部分は かみ合わない事がわかり放置することにした。
・ケース(アルミダイキャスト)
 落下時に強打した部分はリングの固定ネジ部分1カ所のようでした。
 ケース全体は円形のケースがハート形に変形していました。
 ベアリングのライナー部分を有するモーターケースのひずみは少なかった。
 ケースは凹みを木片を介して内側から金槌でたたいて 形を修正しました。
 ギヤケースとリングは木材で円弧の木型を作って これを介して 万力でプレス。
 できるだけ変形をもどしましたが 完全な円にはもどらなかった。

再度組み直し ケースクラック部分とベアリングリングの隙間は 雨水進入防止のため
屋根用コーキング材で塞ぎました。

写真25 約8m落下し 地表
コンクリートに激突。 
横のボルトの位置が
地面に当たったようだ。
丸いケースはハート形に
変形してしまった。

モーターケースとリングの
隙間から下側ギヤベアリング
が見える。
写真26 上部ギヤケースには
クラックができた。

写真27 リングにも1箇所
ネジ部にクラックができた。

5) 雨水対策と最終結果
写真28 分解・整形して
各ステップ毎に動作を
確認しながら再度組立て
ました。

外ケースのクラックは
コーキングで雨水対策を
施しました。

写真29 ベアリングリングのすきまも
コーキングしました。
写真30 再度
銀色塗装をして完成。

試験回転をして
ポテンシオメーター(VR)の
位置余裕を調べました。
左回転ストッパの位置で
4-5pin間 33オーム、
右回転ストッパの位置で
6-5pin間 42オーム で
VRは回転の余裕があり
正しく方角を表示できた。

少し形が悪いですが何とか
修復に成功しました。
写真31 最後にケースの変形に
よるマストの振れを計測
しました。

40cmのパイプを取り
付けて パイプ上端の
横ぶれを計測しました。
数ミリメートルの振れが
ありますが タワー台座の
柔軟性で吸収出来ると
見込んで、タワーに
取りつけました。

取り付け後は、スムーズに
回転し、消費電流は
29mA ACでした。
方角によって値が変わる
ことはありませんでした。
内、2mAはコントローラの
消費電流ですので 負荷を
掛けてもモーターの電流は
ほとんど増加していません。
完了


 何とかメンテナンスを完了できました。
 まずは めでたし めでたし。


 (^|^;)

2014.7.7 記


追記 2016.8.24
・コントローラ のモータープリーゴムベルトが 切れた。
  ベルトは サイズ 35mm(内径)、 太さ 1.5mm、 (断面丸) が適当。
 臨時処置として
 補習用ゴムベルトセット( (アマゾン 540円/30本位 角サイズ組みあわせ 送料 350円)
 を購入し交換した。 ベルトは断面が1mm角位。 バリがあり精度的に粗悪品。
 寿命は不明。 近日中に 千石電子の丸ベルト(36mm)に交換したい。



by JA1NKY