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HAM用の屋上アンテナを回転させるローテータ(エモテータMFG Ltd. 105TS)の動きが悪いので
オシロスコープのリサージュ波形を使ってモーターを診断してみました。
1993年5月に屋上(屋根上)に設置したHAM用のアンテナを回転させるローテータは、21年間一度も分解メンテナンスをしていません。
2〜3年前から、気温が下がる冬季に回転せず 暖かい春〜秋にだけ動くという状況が起きていましたが
今月(2014年6月)になって 片方向(左回転)しか回転しなくなりました。
電気的導通調査の結果、回転リミッターのマイクロスイッチが復帰しない為と判断できました。
製造元のエモテータ(株) (千葉県松戸市松戸896-10 047-367-2916) に交換部品が入手可能かを問い合わせたところ
「原因はグリスの硬化であり、リミットまで左方向へ回転させればマイクロスイッチを押しているアームが動き復帰する」 と
丁寧な説明を受けました。 この処置で部品交換をせずに片回転問題は一応解決しました。
しかし安定して運用するにはローテータを屋上から外して、各所のグリースアップが必要です。
屋根へ登る作業は大変なので作業に手をつける前に、下準備として内蔵モーターの状態をオシロスコープを使って
リサージュ波形を測定することで、他に問題がないか診断してみました。
以下はその作業記録メモです。
MEMO
1) エモテーターの回路構成
図1は ローテータ(回転部)と室内のコントローラの回路図です。
図1 エモテータ回路図
2) モーターについて
105-TSには 単層交流コンデンサ誘導モーターが使われています。
図2のように モーターの主・副極用巻線の端子は3本にまとめられており、手元のスイッチで給電する端子を選ぶことで
正逆回転方向を決める仕組みになっています。
一般にコンデンサ誘導モーターは始動トルクが弱いので 減速用ギヤのグリース固化のために始動できないことがあります。
またコンデンサが容量抜けになるとますます始動トルクが低下します。そのため回転の始動が不調な原因としてコンデンサの
劣化を疑ってみました。しかし、コンデンサはローテータ本体内に取り付けられているので 分解しない限り調べられません。
コンデンサが劣化しているなら、屋上の作業に手をつける前にあらかじめ交換部品を準備しておきたいところです。
図2 ローター本体部 モータの結線
3) リサージュ波形測定
そこで、現状のままで コンデンサーの劣化がないか調査する方法を考えました。
コンデンサーはモーター内の回転磁界を作るため、主磁極に比べて副磁極巻線コイルに進相電流を流す為にあります。
このモーターは 正逆両方向回転用に設計されているので、磁極は 主・副共 同じ構造になっているはずです。
すなわち巻線(インダクタンス)も両者は同等になっていると考えられます。
コンデンサーの劣化によって回転磁界に異常が起きているなら 主・副両磁極巻線の印加電圧電圧から
診断できるはずなので 両極の巻線の電圧リサージュ波形を調査しました。
2現象オシロスコープの基準電圧をモーター巻線のCOM(共通)端子にして 正逆端子(L/R端子)にプロープをあて
電圧波形を計測しました。
オシロスコープによる測定 (BW=40MHz) コントローラの出力にプローブを当てる
4) 測定結果
・ 以下に左/右 回転時の各磁極巻線の印加電圧波形を示します。
診断結果は 波形写真リサージュ波形から回転磁界は正常で コンデンサの容量抜けはありませんでした。
・電圧波形 (振幅が小さい波形が主電圧。 振幅が大きい方がコンデンサによる進相波形です。 ほぼ90度進んでいるのが判る)
(左回転) (右回転)
・リサージュ波形 ==> 理想は真円が良いですが、実用上十分な回転磁界を作っているのが判る。
(左回転) (右回転)
参考: 同相時のリサージュ波形
・コンデンサ両端の電圧波形 (ピークは 約200Vで 電源電圧より高いのでコンデンサの仕様に注意がいる)
(左回転) (右回転)
<取り外しとグリースアップ>
・今後 時間をみつけて 作業する予定です。
(結論)
調査の結果 コンデンサに異常はなくグリースアップだけ行えば良いことがわかった。
ひとまず めでたし めでたし。
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(^|^;)
2014.6.23 記