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TRIO トランシーバ TS-660 ボリューム交換他 復活作業メモ    (2020年4月15日 JA1NKY 記) 

  2018年、JA!XF*局からもらった 21MHz〜50MHz帯マルチバンダートランシーバ。
  電源電流は流れるが、ディスプレーは点灯せずボリュームつまみも曲がっていて 全く機能しないジャンク品。
  50MHz帯の送受信機を持っていなかったので、いつか修理を試みるかもしれないと2年間保存しておいた。
  2020年、国内で発せられた緊急事態宣言で外出できない状況になり、この時間を使って不良の内容調査をしてみた。
  もちろん復活できる見通しが持てたら修理も試みる方針とした。
  以下はその作業記録です。

  TRIO TS−660 外観 (上部と側面は塗り直してあり美しくはない)
   TC-K55の外観写真
   ★ 1981年発売。マルチバンドトランシーバーの草分け的機種。 
      21/24,5/28/50MHz SSB/ CW/FM/AM 10W    


MEMO

1. 症状確認
 ・電源を投入するとメーターランプは点灯する。
  ON時、スピーカーからかすかにポップ音が出るが受信音量をあげても音が出ない。
 ・デスプレーが表示されない。(点灯しない)
  一部のスイッチを操作すると内部のリレーが動く音がするので、何か機能が働いていることはわかる。
  しかし、ディスプレーに表示が無いため、そのときの動作内容はわからない。
 ・AF及びMICの二つのボリュームの軸が曲がっている。また回転の感触がガリガリで回転ストッパーが壊れている。

2. 故障原因調査と修理の記録
 ・ケース内確認
 
上面、下面のケースカバーを外して内部を確認した。
  (写真は修理完成後の内部概観)

 <上面>
  
   ・下部中央、周波数ダイアルの後がディスプレーユニット制御基板

 <下面>
  


3. 故障推定とメンテ作業
3-1 表示機能

 ・上部写真のディスプレー制御基板をコネクタの結線を接続した状態で外して引き出し、
  電源ON状態で基板の各部品を触って(押して)チェックをしたところ、蛍光表示管おリード線を押したとき点灯する場合があった。
  さらにルーペで各端子の半田面を確認したら半田に円形クラックが見つかった。
  そのリードを押すと表示される。その端子はフィラメント端子であった。他方の端子とともに再半田をして解決した。

3-2 ボリューム不良と全体機能確認
 ・MIC/CAR用ボリュームとAF/RFボリュームは 1枚の小型基板(回路図上の名前::スイッチユニット)に載っている。
  接続コネクタ3個(他のひとつのコネクタは無接続で:FM option用)を外し、基板をケースから取り出すと写真右側の
  AF/RFボリューム = (回路図のVR-2-1とVR2-2) が脱落した。
  一方、MIC/CAR用ボリューム = (回路図のVR1-1,VR1-2)も軸が曲がっていて、回転止めが破壊されていた。

  <スイッチユニット基板>
  
   右のVRが脱落している。右背面の半固定VR(青・白)は実験のため仮付けしたもの。   

  <回路図>
  

 ・ 半固邸VRを取り付けて機能試験
  故障個所がこの基板だけであるかを確認するため、RF VRを半固定VRで、また
  AFのVRを外付けで接続して仮組み立てし、その状態で送受信をテストした。
  無理やり50MHzには対応していない28MHzまでのマルチバンド・Vダイポールにつなげて、
  SSBで運用したら、市内及び隣接県(茨城県)の移動局と交信ができた。

 ・ SQLのVRのガリが大きい。
  それ以外の他のスイッチなどは正常で、全体は正しく機能しているようだ。

  <AFボリュームが外付け状態で機能テスト>
  
    外付けVRをひもでしばりつけて仮運用の様子

3-3 代替えボリューム検討
 ・ 壊れているボリュームの軸は 形状が特殊な 2軸2連型。
   内軸(後方): 10kΩ Aカーブ(音量用)
   外維(前方): 10kΩ Bカーブ(直線)
  オークションで中古品などを捜したが見つからなかった。
 ・ 搭載VRに捺印されていた「ALPS]の文字を頼りに、現社名 ALPS ALPINE の製品リストを検索し次のVRを見つけた。
  ★ 型格 RK097221005C  (ALPS ALPINE社製)
    軸      2軸2連 (軸の形状は従来穂品と類似している) 但し固定ねじ部がM9ではなくM7。若干細い。
    抵抗値   内外軸とも 10kΩ Aカーブ, ==> CARとRFには Bカーブが好ましいが標準製品にはない。Aカーブでガマン。
    端子間隔  5mm
    形状     角形。小型化されている。(従来 丸形)
   URL
    https://tech.alpsalpine.com/prod/j/html/potentiometer/rotarypotentiometers/rk097/rk097221005c.html

  <RK097221005C 形状と寸法>
  

 ・ 発注
  ALPS ALPINE社の指定ネット販売会社のひとつに発注。(BtoBビジネスの通販会社)
  購入先のURL
   chip one stop https://www.chip1stop.com/view/dispDetail/DispDetail?partId=ALPS-0001128
    1個以上 1個単位で注文 OK.
     @ \338円 1個〜 + 送料 ¥650  
  翌日、ワッシャーとナットもついて到着。つまみはピッタリ合いました。

  <届いた RK097221005C 形状>
  
   さすが 半導体通販会社だけあり、モスパックに刺して届いた。

  <既存のつまみを付けて 新旧のVR形状比較>
  
   手前、今回購入したVR.。 取り付けネジ直径が細い(7mmΦ)


 ・ 基板に実装
  この小型基板は筐体に直接固定されておらずVRの軸ネジで固定されている。(基板は浮いている)
  基板からVR軸中心までの高さが低くなっても軸間隔が同じであれば実装上の問題はない。
  新旧でVRの内軸のつまみ用カット面の回転角が異なるため、最終実装後につまみの位置マークが変わらないようにVRの取り付け向きを変更した。
  VRは基板に両面テープで固定し、フロン被覆線で配線をして、基板-VR間の機械的強度をもたせた。(基板が落下しないように)
  基板は1層品。銅箔の接着剤がかなり劣化していて剥がれやすい。 一部欠損が生じたが配線で補った。

  <ボリューム交換後の基板の様子>
  
   VRの向きに注意。配線で基板を支える強度を持たせた。

  <フレームにボリューム基板を固定したところ>
  

 ・ フレームの曲がり修正
   フレームに衝撃時の歪みがあり、取り付け後のVRの軸が垂直(他と平行)にならなかった。
   そこで、AF/RFボリュームの取り付けワッシャーの下に、他のワッシャーを1枚挟んで軸の角度を調節した。

  <ワッシャを挟んで 軸の垂直(平行)を調節>
  


3-4 その他
  - SQL(スケルチ)ボリュームのガリは、VRケースの開口部分から接点復活剤を噴射して解消した。
  - 同基板上の半固定VR(VR3)を回し RFボリュームの最大ゲイン角度を右回転回しきりの位置になるよう調整した。


完成・復活です。

  <全てが スムーズに機能するようになりました>
  


4、TRIO TS-660 仕様概要

項目 仕様
型式 All Mode Quad Bander
周波数帯 21MHz帯、24MHz帯、28MHz帯、50MHz帯
電波形式 SSB,、AM,、CW
出力 SSB・CW 10W、AM 4W
ANT/インピーダンス 50Ω
電源電圧 12V〜16V (基準 13.8V)
                    (正価 119,800)円 (1981年当時)


5. TRIO TS-660 資料 (下記を参照)

   取扱い説明書 (PDF)
   規格・回路 説明書 (Specifications / Circuit Description) (PDF)
   各基板の回路図・部品レイアウト図 (PDF)
   サービスマニュアル(Service Manual) (PDF)



〇 JA1NKY メイン リグ 2020/4/15 現在
   TS-440S (1986年製 ・・・・・ 34年前製造)  (正価 \20,8000))
    周波数: 1.9-30MHz
    モード : SSB/CW/FM/FSK
    出力 :  100W